ロボアドバイザー入門 -AIや独自アルゴリズムを使った資産運用とは?-
1.ロボアドバイザーとは?
ロボアドバイザーとは、AI(人工知能)や独自のアルゴリズムを利用した資産運用サービスです。
大きく分けると、「運用型」と「アドバイス型」の2種類があり、運用型のロボアドバイザーが金融商品の売買や運用結果の報告などを行うのに対して、アドバイス型のロボアドバイザーは売買は行わず、投資家の金融商品選び等をサポートします。
その中でも、最近とくに注目を集めているのが、運用型のロボアドバイザー。投資用のアルゴリズムを組み込んだAIが、ポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)の作成から売買までを完全自動で行うため、投資知識の少ない初心者でも、高度な金融工学を下敷きにした資産運用を始められるとあって人気です。
しかし、ロボアドバイザーが、どのような運用を行っているのか、運用にかかるコスト(手数料)や、取り扱う金融商品などについて、詳しいことがわからないという方も多いでしょう。
そこで本特集では、ロボアドバイザーの中でも特に注目度の高い「運用型」にスポットを当てて、ロボアドバイザーの特徴や、選び方などを解説します。
おすすめのロボアドバイザー
WealthNavi(ウェルスナビ)
フィンテックベンチャーの「ウェルスナビ」が提供する運用型のロボアドバイザー。預かり資産・ユーザー数ともにNo.1(2018年3月現在)と、ロボアドバイザーの中でも高い知名度と人気を誇る。運用する金融商品は米国上場ETF。最低投資額は10万円から。運用手数料は、預かり資産3,000万円までが1.10%(税込)となっている。独自の税金自動最適化(DeTAX)機能を搭載し、含み損益を調整することで投資効率を高めることが可能。クイック入金や分配金の出金などにも対応しており、使い勝手が良い。
- 目次
- 1.ロボアドバイザーとは?
- 2.ロボアドバイザーの特徴
- 2-1. アルゴリズムにもとづく自動運用
- 2-2. 長期投資&分散投資
- 2-3. 運用開始までの手続きが簡単
- 3.ロボアドバイザーの選び方
- 3-1. 手数料で選ぶ
- 3-2. 運用する金融商品で選ぶ
- 3-3. 入出金のしやすさで選ぶ
- コラム. ロボアドバイザーの税金はどうなる?
- 4.ロボアドバイザーを利用して手軽な資産運用を始めてみよう
2.ロボアドバイザーの特徴
アルゴリズムにもとづく自動運用
運用型のロボアドバイザーの最大の特徴が、ポートフォリオの作成や金融商品の売買等を、AIや独自のアルゴリズムが自動で行う点です。
ロボアドバイザーの自動運用は、過去の投資データなどを分析して作られた独自のアルゴリズムを使用しています。ロボアドバイザーは、このアルゴリズムに沿って自動的に金融商品の購入や銘柄の入れ替えを行うため、個人投資家が抱きがちな売買判断の迷いや値動きへの不安といった感情に左右されることがありません。
ロボアドバイザーのアルゴリズムには、専門家や資産運用会社からのアドバイスをもとに、高度な金融理論が活用されています。
たとえば、金融理論の一つである「現代ポートフォリオ理論」は、インデックスファンド等の金融商品にも利用されている精度の高い金融工学理論です。ロボアドバイザーの「WealthNavi(ウェルスナビ)」では、この「現代ポートフォリオ理論」をアルゴリズムに組み込んで、ユーザーのリスク許容度に応じた運用を行います。
このような金融理論をベースとした運用は、従来であれば、機関投資家などのプロによって行われるケースがほとんどで、一般の投資家が個人で利用することはまれでした。
ロボアドバイザーが登場したことにより、個人投資家や投資初心者でも、投資のプロと同じような資産運用ができるようになった意義は非常に大きいと言えるでしょう。
長期投資&分散投資
多くのロボアドバイザーは「長期分散投資」を運用の基本としています。
長期分散投資とは、複数の投資対象に長期間投資し続けることで、時間と投資先を分散し、値動きの幅を少なくする投資手法のこと。
例えば、ロボアドバイザーが運用する金融商品の多くは、個別の株式銘柄や不動産ではなく、ETF(上場投資信託)やインデックス型の投資信託です。これらの金融商品は、株価や債券指数など、あらかじめ決められた「指数」に連動するように作られており、1つの商品で株式市場全体や債券市場全体に投資することが可能です。
ロボアドバイザーではさらに、投資対象を先進国の株式と新興国の株式、国内の債券と海外の債券、商品(金、銀、農作物など)、不動産などに分散し、それぞれの指数に連動するETFや投資信託を組み合わせて、ユーザーの投資方針に合ったリスク・リターンになるようコントロールしています。
ロボアドバイザーの投資対象と特徴(例:ウェルスナビの場合)
株式 | |
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米国株 | 経済成長によるリターン獲得、インフレ(物価上昇)への対応が可能。 |
日欧株 | 米国株に準ずる。米国株との地域的な分散が可能。 |
新興国株 | 先進国よりも高い経済成長によるリターン獲得、インフレへの対応が可能。 |
債券 | |
米国債券 | 資産価値の安定性。株式との分散効果(値動きが異なる)。 |
物価連動債 | 資産価値の安定性。株式との分散効果(値動きが異なる)。インフレへの対応が可能。 |
オルタナティブ | |
金(コモディティ) | 株式との分散効果(値動きが異なる)。インフレへの対応を期待。 |
不動産 | インフレへの対応を期待。株式・債券との分散効果(値動きが異なる)。 |
過去の投資データによれば、このように、世界経済全体に長期間の分散投資を行った場合、運用結果はプラスになる目算が高くなります。リーマンショックのように市場が急変した場合は、一時的に経済が停滞するケースもあるものの、長期で俯瞰したときの世界経済は、ゆるやかな成長を続けており、これらの市場に長期で投資を行うロボアドバイザーも、運用資産を増やせる可能性が高いと言えるでしょう。
また、ロボアドバイザーには「積立機能」を持つものも少なくありません。積立機能を利用すると、毎月一定額がロボアドバイザーの口座に入金され、その時々の価格で金融商品の買い付けが行われます。金融商品の値上がり時には少なく、値下がり時には多くの金融商品を買い付けることになるため、長期で積立を行うことにより、それぞれの金融商品の価格は平均化されます。積立によって資金が増えるだけでなく、より値動きの幅が少ない(=リスクの少ない)投資を行うことができるのです。
運用開始までの手続きが簡単
ロボアドバイザーの多くは、Web上からの簡単な手続きで運用を始めることができます。 運用開始までの大まかなステップは、投資方針のチェック(&ポートフォリオの立案)、口座開設・契約、入金、の3つ。
- 投資方針のチェック(&ポートフォリオの立案)
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多くのロボアドバイザーは、最初に申込者の投資方針をチェックします。年齢や投資経験、貯蓄額などの質問に回答すると、AIが自動で投資家の「リスク許容度」を診断し、ポートフォリオを決定します。投資に詳しくない初心者でも、自分のリスク許容度に合った投資方針を立てられるうえ、運用する金融商品についても提案してもらうことができます。
なお、ポートフォリオや投資方針は、運用前や運用中に自分でカスタマイズすることも可能です。
- 口座開設・契約(&マイナンバー・本人確認書類の提出)
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投資方針をチェックし、口座開設を申し込んだあとは、マイナンバーなどの必要書類を提出します。ロボアドバイザーの口座は「投資一任運用口座」といい、投資家が自分の資産を委託することを明記した「投資一任運用契約」を締結してはじめて利用することができます。
契約の手続きは、口座開設と同時に行うことができます。マイナンバーや本人確認書類の提出も、スマートフォン等で撮影した画像をアップロードすればOK。最後に、住所確認のための簡易書留を受け取ることで、口座開設は完了します。
※証券会社や銀行が提供するロボアドバイザーで、提供元の証券会社や銀行に口座を持っていない場合は、別途、証券口座や銀行口座の開設手続きが必要です。
- 入金
- 口座開設が完了したあとは、ロボアドバイザーの口座に運用資金を入金します。入金方法は銀行振込が一般的。Webからの「クイック入金」に対応しているロボアドバイザーであれば、提携金融機関からの入金が即時反映されるうえ、振込手数料も無料です。入金後は自動的に金融商品の買い付けが実行され、運用がスタートします。
3.ロボアドバイザーの選び方
手数料で選ぶ
長期で投資する際の最大のコストは、運用期間中に発生する運用手数料や信託報酬です。ロボアドバイザーを選ぶときにも、まずは各社の運用手数料を比較してみましょう。
現在、運用型のロボアドバイザーの手数料は、1%前後でほぼ横並びとなっていますが、中には、成果報酬型の手数料プランを持ち、運用成績次第で手数料が1%を超えるロボアドバイザー(楽ラップなど)もあります。
ロボアドバイザーの手数料を比較(税込)
WealthNavi(ウェルスナビ) | 預かり資産3,000万円まで:年1.10%※長期割で年0.90% おすすめ! ※3,000万円超:年0.55% |
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THEO(テオ)+ docomo | 預かり資産3,000万円まで:年1.10% ※3,000万円超:年0.55% |
楽ラップ | 固定報酬型:年最大0.963 *1 成功報酬型:年最大0.853%+運用益積上額の5.50% *2 |
マネラップ | 年1.0075% |
*1 運用資産の最大0.715%(投資顧問料+運用管理手数料)+信託財産の最大0.248%(ファンド費用)
*2 運用資産の最大0.605%(投資顧問料+運用管理手数料)+信託財産の最大0.248%(ファンド費用)
運用する金融商品で選ぶ
ロボアドバイザー選びのポイントとして、同じくチェックしたいのが運用する金融商品です。現在は「ETF(上場投資信託)」や「投資信託」を運用するロボアドバイザーが多め。
購入する銘柄も、ロボアドバイザーの提供会社によって、あるていど絞り込まれています。運用時の金融商品の銘柄名や選定基準を公開しているロボアドバイザーが多いので、公式サイトのホワイトペーパーなどを確認してみましょう。
また、ロボアドバイザーが運用する金融商品は、日本国内で円建てのまま運用されるケースと、米国市場でドル建てで運用されるケースに分かれます。ドル建てで運用される場合の運用成績は、金融商品そのものの値動きだけでなく、ドル円の為替相場にも影響を受けます(円安になれば評価額が上がり、円高になると評価額が下がる)。為替リスクが加わる点には注意が必要ですが、資産の一部を外貨で持つことになるため、通貨についても分散できるというメリットがあります。
コラム ロボアドバイザーの税金はどうなる?
ロボアドバイザーの運用する金融商品には、分配金や譲渡益に対して20%が課税されます。同じくETFや投資信託を運用できる「NISA(少額投資非課税制度)」や、運用益の非課税に加えて、掛金を全額所得控除できる「iDeCo(個人型確定拠出年金)」と比較すると、投資のパフォーマンスが落ちる点は注意が必要です。
(※ただし、NISAやiDeCoを利用する場合、ポートフォリオの作成や銘柄選びは自分自身で行う必要があります。)
ちなみに、ロボアドバイザーが海外の金融商品を運用する場合は、分配金に対して海外でも10%が課税されます(自動で源泉徴収される「特定口座」を選択した場合)。しかし、これは日本での課税と合わせて二重に課税されていることになるため、確定申告(外国税額控除)をすることで、海外課税分の10%を控除することが可能。課税された額がいくらかは、ロボアドバイザーの年間取引報告書で確認することができます。ただし、還付金は「控除限度額範囲内」となるため、それぞれの収入・課税の状況によっては、必ずしも課税額がそのまま戻らない場合もあります。還付金が数百円程度であれば、還付手続きを見送るのも一つの方法。一方、投資額が大きい等で課税額も増える場合は、確定申告を検討すると良いでしょう。
入出金のしやすさで選ぶ
ロボアドバイザー選びの際に以外に見落としがちなのが、入出金の利便性です。ロボアドバイザーの中には、入金時の振込手数料が無料となる「クイック入金」に対応しているものがあります。
また、出金の規定や所要日数なども要チェック。ロボアドバイザーでは、出金の際、口座に一定の残高(預かり資産)がなければ、資産の引き出し(一部引き出し)ができないケースが少なくありません。出金を依頼してから銀行口座に振り込まれるまでの日数も、通常は一週間から10日ほどかかります。
なお、多くのロボアドバイザーの中でも、WealthNavi(ウェルスナビ)は、クイック入金に対応しているほか、出金の際の残高規定がなく、所要日数も比較的短めと、入出金時の優位性が高くなっています。
WealthNavi(ウェルスナビ)
入金時 | |
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手数料 | 振込手数料 ※金融機関により異なる |
クイック入金 | あり(振込手数料無料・土日祝含む24時間リアルタイム入金) おすすめ! |
出金時 | |
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金額 |
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手数料 | 無料 |
所要日数 | 手続きより3~4営業日 おすすめ! |
分配金の引き出し | 可 |
*対象金融機関:三井住友銀行、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、住信SBIネット銀行
THEO(テオ)+ docomo
入金時 | |
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手数料 | 振込手数料 ※金融機関により異なる |
クイック入金 | なし |
出金時 | |
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金額 |
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手数料 | 無料 |
所要日数 | 手続きより7営業日程度 |
分配金の引き出し | 不可(再投資に利用) |
4.ロボアドバイザーを利用して手軽な資産運用を始めてみよう
ロボアドバイザー入門、いかがでしたか。
現代社会は多くのものがプログラムによって動いており、ロボアドバイザーはその最たる例と言えるでしょう。
ロボアドバイザーのアルゴリズムには、現時点はディープラーニング等の最先端のAI技術が利用されているわけではありません。しかし、投資の世界で高い実績を持つ金融工学と運用技術を、一般の投資家や投資初心者が少額・低コストで利用できるようになったことは、大きな転換点と言えるでしょう。
投資を始めたいけれど、自分で銘柄を選んだりポートフォリオを作ったりすることはハードルが高い、と感じている方や、仕事が忙しく投資をしっかり勉強する時間がない、という方は、各社が提供しているロボアドバイザーをチェックして、自分に合ったものを活用してみてはいかがでしょう。
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Author:長尾 尚子