生前贈与の3つのメリットと2つのデメリットを投資のプロが解説
投資のプロも活用する生前贈与。そのメリットとデメリットとは?
みなさんは生前贈与という言葉をご存知でしょうか?生前贈与とは、その名前の通り、親が生きているうちに次世代に対して資産を残すことを言います。
自分は対象外とか、子どもに資産を残したくないと考えているかたもいらっしゃると思いますが、相続税の高さを考えるとそうは言っていられません。
また相続財産が現金ではなく土地や株券になる場合、相続税を収めるために子どもが自身の資産を売るケースや、家を売却するケースがあるのも事実。生前贈与を利用し、少しずつ子どもに資産を移しておけば、このような問題に対処することもできます。
そこで今回のマネーピックのニュースは、すでに生前贈与に取り組んでいる投資のプロが、生前贈与のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。
興味がある方は是非チェックしてみてください。
相続税は想像以上に高額!資産家は4割以上納付するケースも
相続税は自分たちが考えている以上に高額です。例えば夫、妻、子ども2人いる場合は4,800万円まで相続税の基礎控除の対象になりますが、4,800万円を超えると、相続税の納付対象になります。
ちなみに相続税は現金だけではなく、土地・建物・生命保険も相続税の対象です。また税率は10%からスタートし、6億円を超えるとなんと最高55%に!資産家にとって、相続税は非常に厳しい納税制度と言えるでしょう。
▽相続税の基礎控除
基礎控除額:3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 例:法定相続人が妻と子供2人の場合の基礎控除額
- 3,000万+600万×3人=4,800万円まで非課税
▽相続税の相続財産への税率
1,000万円以下 | 10% |
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3,000万円以下 | 15% |
5,000万円以下 | 20% |
1億円以下 | 30% |
2億円以下 | 40% |
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3億円以下 | 45% |
6億円以下 | 50% |
6億円超 | 55% |
生前贈与のメリット
- メリット その1相続税を減らすことができる
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生前贈与の最大のメリットは、生前贈与した金額分、相続税を減らすことができる点でしょう。例えば相続財産が1億円ある方が生前贈与を利用し、3,000万円贈与が完了していたとします。
そうすると相続税の課税対象は7,000万円になり、課税対象の大幅な圧縮が可能です。
生前贈与を活用することで、大幅に相続税を減らすことができる点が、生前贈与の最大のメリットと言えるでしょう。
- メリット その2生前贈与なら年110万円まで非課税
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生前贈与は年110万円まで贈与税が課税されません。つまり110万円であれば税率0%(非課税)になるのです。もし生前贈与をしなければ、この110万円に最高55%の相続税が課税されることになります。
子どもに大きな資産を残す残さない関係なく、無駄な税金はできれば払いたくないもの。一定の資産を持つ方であれば、生前贈与の非課税枠は、使わない手はないでしょう。
- メリット その3110万円を超え、あえて証拠を残す手法も
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細かい投資手法の説明は割愛しますが、筆者は110万円を超える金額を生前贈与しています。贈与税が非課税になるのは110万円までですので、その金額を超えると、贈与税を納付しなければいけません。
例えばその贈与税が10%だとすると納税コストが発生しますが、もし相続税で納める際の税率が40%だとすると、差し引き30%の節税効果が期待できます。
また贈与税を納付することで、明確な証拠を残し、生前贈与が否認される問題を回避することもできます。
相続財産が大きい場合、110万円以上を贈与する方法も有力な選択肢の一つです。
生前贈与のデメリット
- デメリット その1中途半端な生前贈与は税務署に否認される
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生前贈与という手段は相続税の節税対策としてとても一般的な手法ですが、その分税務署は眼を光らせており、中途半端な生前贈与は税務署に否認されるリスクがあります。
例えば現金渡しや、名前だけ子どもの口座を作り管理を親がしている場合、何の書面も残さず毎年110万円納付している場合などがこれに当たります。
この問題を回避するためには贈与契約書を作成する、第三者立ち合いのもとで贈与を行い、証拠を残す。贈与したお金を貯蓄型の生命保険やジュニアNISA等に使い、子どもの意思で運用している証拠を残すという方法も有効です。
- デメリット その2子どもの人生に悪い影響を与える可能性がある
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親が過度に子どもに干渉したり、資産を与えたりする行為は、子どもの経済的な自立を妨げる他、子どもが人生に悪影響を与えてしまう可能性すらあります。
法律の範囲内で節税することは決して悪いことでありません。また子どもの少しでも資産を残したいという気持ちもよくわかります。
ただ子どもにとってプラスにならない生前贈与ならしないほうがマシです。自分がやりたいからではなく、子どもにとってどうあるべきかを第一に考え、生前贈与を活用すると良いでしょう。
ちなみに筆者は生前贈与を通じて、子どもたちにSBI証券のジュニアNISAの口座を開設させ、自分の意思で投資銘柄を選ばせ、投資することの大切さや経済の仕組みを学ばせています。
生前贈与は早ければ早いほど有利!今のうちから準備をはじめよう!
生前贈与は相続税対策の切り札と言っても良い制度と言えます。ただし生前贈与の非課税枠は110万円が限度。つまりできる限り早く生前贈与をスタートしたほうが有利です。
生前贈与に興味がある方は、この機会に将来の相続と生前贈与について、真剣に考えてみてはいかがでしょう?