証券会社のレーティングの信憑性と投資判断
株式投資している方であれば、証券会社のレーティングを一度はチェックしたことがあるのではないでしょうか?
レーティングとは、証券会社のアナリストが個別企業に対して分析を行い、投資すべきかどうかの判断材料として公表を行っており、投資家の多くが実際に個別銘柄投資を行う際の参考指標として利用しています。
その一方でこのレーティングは外れることも多く、その信憑性や意味に関して、度々議論を読んでいるのもまた事実。投資初心者の中には、多くのプロ(証券会社のアナリスト)が買いを推奨しているという理由で投資銘柄を選び、結果的に痛い目を見る方も少なくありません。
それではレーティングの信憑性を検証するため、三井住友フィナンシャルグループのレーティングを例に挙げ、説明します。
まずは2017年6月にSBI証券内で公表された、三井住友フィナンシャルグループのレーティング情報を見てみましょう。
≪ 三井住友フィナンシャルグループのレーティング情報 ≫
発表日 | 証券会社 | レーティング | 目標株価 |
---|---|---|---|
2017年6月13日 | 岩井コスモ証券 | A(強気)継続 | 5,000円(新規) |
2017年6月20日 | 東海東京調査センター | ニュートラル(中立)継続 | 3,510円→4,700円 |
2017年6月22日 | 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | ニュートラル→アンダーウエイト | 4,900円→3,900円 |
2017年6月22日 | UBS証券 | ニュートラル→Buy | 4,285円→4,860円 |
このデータをみると三菱UFJモルガン・スタンレー証券を除く3社が三井住友フィナンシャルグループの現在の株価は割安だと考え、投資対象として推奨していることがわかります。
では実際の三井住友フィナンシャルグループの株価の推移はどうだったのでしょうか?下記は6月13日の終値と最新(7月13日)の終値、そしてこの期間の最安値と最高値を調べたものです。
≪ 実際の終値と株価 ≫
6月12日終値 | 4,283円 |
---|---|
7月13日終値 | 4,282円 |
最安値 | 4,195円(6月15日) |
---|---|
最高値 | 4,417円(7月6日) |
この値動きを見る限り、三井住友フィナンシャルグループの株価は証券会社のレーティング通りに上昇してはおらず、停滞気味と言えるでしょう。これは三井住友フィナンシャルグループの例に限っている訳ではなく、他の銘柄でも同じような事例は枚挙にいとまがありません。
つまりレーティングというものはあくまで参考指標の一つにすぎず、それだけで株価が決まる訳ではないとはっきりいう事ができるのです。
ちなみに証券会社のレーティングは決して公平中立に設定されているものではありません。証券会社には自己売買部門という自社の資金で株の売買を行う部門があるため、そのポジションから著しく外れる投資判断は難しいでしょう。また何らかの取引関係がある会社(例えば上場時に主幹事証券を務めた、公募増資の際、主幹事を担った等)のレーティングは比較的甘い傾向があるのもまた事実です。
もちろん全てがポジショントークという訳ではなく、証券会社のアナリストがしっかり分析し、レーティングを行っている銘柄も数多くあります。
ただ個人投資家がどの銘柄がポジショントークで、どの銘柄が公平中立な分析なのかを判断するのは困難です。その見極めが難しい以上、アナリストのレーティングを見る際は、あくまで参考指標とし、最終的には自分の判断を信じ、投資していく姿勢が重要になります。
投資の大原則は「自己責任」です。それを忘れないことが、投資の世界で長く生き残っていくための秘訣と言えるでしょう。
レーティングの統計データを見ることができるおすすめの証券会社